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★愛すればこそ近く思う /ゲーテ




        ―愛すればこそ近く思う ―


        朝の太陽(ひ)がほのぼのと海からさしそめるとき
        わたしはあなたを思う

        月光(つきかげ)がきらきらと泉に映るとき
        わたしはあなたを思う

        遠い道にゆらゆらと埃の立ちまようとき
        わたしはあなたを見る

        ほそぼそとつづく岨道(そばみち)に 旅びとの戦(おのの)く夜更(よふ)け
        わたしはあなたを見る

        水音もおぼろにひたひたと潮(うしお)ののぼるとき
        わたしはあなたの声を聞く

        ものすべて黙する林の静寂(しじま)を行くとき
        わたしはあなたの声に耳を傾ける

        たとえどのように遠く離れていようと
        わたしはあなたの傍(そば)にいる!

        太陽(ひ)が沈んでゆく やがて星が輝くだろう
        ああ あなたがここにいらっしゃらないとは!

        (ゲーテ)




        ―恋人を身近に―

        日の光海の面より照り返る時、
         われ、おん身を思う。
        月のひかり泉にゆらめき映ゆる時、
         われ、おん身を思う。

        遠き道の上にちりの舞いあがる時、
         おん身の姿、わが眼に浮ぶ。
        ふくる夜、細き子みちに旅びとのわななく時、
         おん身の姿、わが眼に浮かぶ。

        かしこにうつろなる音立てて波高まる時、
         われ、おん身の声を耳にす。
        静かなる森のしげく行きて耳傾く、
         なべてのもの黙す時。

        われ、おん身のもとにあり、よしやおん身遠く隔たりてあるとも
         おん身わがかたえにあり。
        日落つれば、やがて星わがために輝かん。 
         おお、おん身いましなば。


        高橋健二 訳/新潮文庫より







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